間々田 佳子

「首の後ろが重だるい」「上を向きにくい」「首から肩にかけてガチガチ」――そんな首凝りに悩んでいませんか?

実はこの“首凝り”、ただの疲れや姿勢の問題だけではなく、顔の表情や美容面とも深く関係しているのです。
表情筋研究家の視点から、首こりの原因と、首から顔への影響、そして改善のための基本的な考え方をお伝えします。

首凝りの主な原因

首凝りは、筋肉の緊張が慢性化して血流や神経の通りが悪くなっている状態です。特に首の後ろ側――僧帽筋(そうぼうきん)や後頭下筋群(こうとうかきんぐん)といった筋肉に負担がかかることで、硬さ・詰まり・重だるさが生じます。

では、なぜこの部分に負担がかかってしまうのでしょうか?
その大きな理由は、日常的な姿勢と習慣にあります。

知らず知らずのうちに首をこわばらせていませんか?

ここでは、首凝りを引き起こしやすい生活習慣を紹介します。
「あっ、自分もやってるかも」と思い当たるものがあれば、ぜひ今日から意識してみてください。

1. スマホ・パソコンの長時間使用(うつむき姿勢)

現代人にもっとも多い首凝りの原因が、長時間のうつむき姿勢です。
スマホを見るとき、パソコン作業をするとき、首が前に突き出たような姿勢になっていませんか?

このような状態では、首の後ろ側(後頭部〜肩上部)にある筋肉が、重たい頭をずっと支え続けることになり、疲労がたまりやすくなります。

しかも、首が前に出ることで背中が丸まり、肩甲骨まわりも固まりやすくなります。こうした全身の連鎖が、慢性的な首凝りを生み出します。

2. 猫背・前のめりの姿勢が習慣化している

座っているとき、立っているとき、無意識に背中が丸まり、肩が内側に入っていませんか?
この「猫背姿勢」は、首が自然に前方へ引っ張られる姿勢をつくり、首の後ろの筋肉に持続的な緊張を与えます。

さらに、骨盤が後傾したまま背中が丸まると、頭を正しい位置で支えるのが難しくなり、首のこわばりだけでなく、頭痛や眼精疲労の原因にもなりやすいのです。

3. 無意識の力み・食いしばり・ストレス

首凝りは、メンタルの状態とも深く関係しています。
緊張や不安を感じているとき、人は無意識に首や肩に力を入れて身構えるものです。

また、食いしばりや歯ぎしりのクセがある人は、あごまわりの筋肉が連動して首を固めるため、首の後ろや側面の筋肉に負担がかかりやすくなります。

ストレスが慢性的になると、首まわりの緊張が“クセ”として定着し、常にこっているような状態に陥ります。

4. 運動不足・筋力低下

首や肩の筋肉は、動かしていないと硬くなりやすい部位です。
特にデスクワーク中心の生活や運動不足が続くと、筋肉は使われることが少なくなり、血流やリンパの流れが滞り、疲労物質がたまりやすくなります。

また、体幹や背中の筋肉が弱くなると、正しい姿勢を保つ力も落ち、姿勢が崩れて首に負担が集中する悪循環が生まれます。

5. 枕や寝姿勢が合っていない

朝起きたときから「首がこっている」と感じる方は、寝ている間の首の角度や支え方に問題がある可能性があります。

枕の高さが合っていないと、首の後ろの筋肉が一晩中引き伸ばされたり、反った状態になったりして、就寝中に首に負担がかかってしまうことがあります。

また、うつぶせ寝や高すぎる枕は、首の自然なカーブを崩しやすく、朝のこりや違和感につながります。

6. 冷えによる筋肉の緊張

首は服の隙間から冷えやすい部位でもあります。
冷たい風や空調の風が直接当たると、筋肉が反射的に緊張し、こわばってしまうことがあります。

特に冬場や冷房の強い夏場は、首を冷やさない工夫(スカーフ、タオル、ストールなど)も首凝り予防のひとつです。

姿勢が整えば、筋肉は無理なく働ける

「首が凝るからストレッチする」「マッサージでほぐす」
――そんなケアをしても、すぐに元に戻ってしまう……という経験はありませんか?

それは、“首が凝る根本的な原因”が解消されていないからです。
その根本とは、「姿勢」。特に頭の位置が大きく関わっています。

頭は意外と重く、約4〜5kgあります。
正しい姿勢では、その重さを首の骨(頚椎)と全身のバランスで無理なく支えています。

ところが、スマホやPCを見るときのように頭が前に出た姿勢になると、首の後ろ側の筋肉に大きな負担がかかります。
これは、ボウリングの球を腕を伸ばして支えているようなもの。支える筋肉は常に緊張し、やがて“凝り”となって現れるのです。

正しい姿勢とは、頭が肩の真上に乗り、背骨の上にスッと重心が整っている状態。
このバランスが整っていると、筋肉は「必要なときだけ」使われ、「休めるときはちゃんと休める」状態になります。

つまり、

姿勢が整うことで

  • 首の後ろの筋肉にかかる負荷が減る
  • 常に頑張っていた筋肉が“休める”状態になる
  • 血流が改善し、凝りや痛みがやわらぐ

といった変化が自然に起こるのです。

とはいえ、姿勢を整えるために「がんばって伸ばす」必要はありません。

「背筋を伸ばさなきゃ!」と無理に胸を張ったり、肩に力が入ったりしていませんか?
それはかえって首や背中の緊張を強めてしまう原因になります。

大切なのは、骨格の上に自然に重さを乗せる感覚。
では、どうすればその“自然な支え方”が身につくのでしょうか?

首の骨の存在を感じることから、首凝りはほどけていく

私たちが首凝りを感じるとき、多くは「筋肉が張っている」「凝っている」といった“表面の感覚”にばかり意識が向いています。
しかし、首を本当の意味で緩めるためには、その土台となっている「骨の存在」を感じることが、とても大切です。

首は、頚椎という7つの小さな骨が積み重なって構成されています。
この骨の柱があるからこそ、私たちは重い頭を支え、自由に動かし、バランスを取ることができているのです。

筋肉というのは、本来、骨と骨をつなぎ、動かすために働いている組織です。
ですから、「骨の位置がどこにあるのか」「どこで支えられているのか」を意識するだけで、筋肉の緊張は自然とゆるみやすくなります。

例えば:

首の後ろの筋肉がガチガチに張っているとき、

「今、頭を支えてくれている頚椎がどこにあるか」を静かに思い浮かべてみる。

首を左右に傾けたとき、

「その動きをつくっている骨のつながり」をイメージしてみる。

それだけで、首の周辺がふっと緩むような感覚に気づくことがあります

まず首の骨を触って、“支えている骨”に意識を向けてみよう

首の骨(頚椎)は、私たちが日常の中でほとんど意識することのない、とても繊細なパーツです。
ですが、その存在にそっと意識を向けるだけで、首まわりの筋肉は「もうそんなに頑張らなくていいよ」と、力を抜く準備を始めてくれます。

鼻から静かに息を吸い、口からゆっくりと吐きながら、両手で首の後ろをやさしく包み込むように触れてみてください。
今、自分の頭を支えてくれている骨の存在を、ただ感じてみましょう。

意識を向けることで、筋肉は自然と緩む方向へと変わっていきます。

姿勢の整え方

骨の存在を感じて、首周りから無駄な力が抜けたら、あらためて姿勢を整えていきましょう。

コアフェイスの作り方

① 骨盤ポジション
骨盤を立て、左右の坐骨を椅子に押し当てます。
② 背骨の意識
背骨を1つ1つ積み木のように立てながら、その上に頭蓋骨(頭)を乗せていきます。
③ 頭の位置
額とあごは床に対して90度です。首の後ろをのばし、頭を高い位置に引き上げます。
④ 呼吸
意識的に呼吸を繰り返しながら、顔、体、心のあらゆる緊張を外し、コアフェイスを細く長くしていきます。
⑤ さらにランクアップ!
余裕があれば、息を強く吐く時に腹圧をかけ、下腹部を絞り上げるようなイメージで行います。

首がゆるめば、顔も動き出す

顔の筋肉(表情筋)は、頭蓋骨や皮膚とだけでなく、首や肩の筋肉とも密接につながり、影響を与え合っています。
つまり「首と顔はひとつながりである」ということ。

だからこそ、首まわりがこわばっていると、表情筋も自由に動けなくなり、顔にこわばり・むくみ・たるみ・シワといった不調があらわれるのです。
逆に、首の凝りがやわらぎ、後ろ側がゆるんでくると、表情筋は本来の動きを取り戻し、顔の印象にも自然な変化が生まれていきます。

筋肉は『鍛える』ことと同じくらい『緩める』ことも大切なんです!

首を緩めることは、顔の土台を整えること。
どんなに顔だけをケアしても効果を感じづらいときは、首のこわばりがブレーキになっている可能性があります。

深い呼吸とともに、首の骨の存在を感じ、姿勢を整える

その静かな習慣が、顔の筋肉を目覚めさせ、あなた本来の自然でやわらかな表情を引き出してくれます。

とはいえ、姿勢は長年の習慣やクセの積み重ねによって作られているため、自力で整えるのが難しいと感じる方も少なくありません。

MYメソッドアカデミー

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