間々田 佳子

近年、美容の世界では「涙袋」が注目を集めています。笑ったときに下まぶたがふっくらと膨らむその部分は、顔に可愛らしさや柔らかさを与え、若々しい印象をつくる要素として人気です。芸能人やモデルの多くが涙袋を持っていることから、「自分には涙袋がないから物足りない」「疲れて見える」と悩む方も増えています。

しかし、涙袋がないことは決して悪いことではありません。涙袋がなくても上品で知的な印象を与える方も多くいますし、「すっきりした目元が好き」という方もいらっしゃいます。大切なのは「自分の目元をどう見せたいか」ということ。とはいえ、もし「もう少し目元に柔らかさやハリを出したい」と思うなら、日常の表情の使い方や筋肉を意識することで、自分の力で変えていくことができます。

ここでは表情筋研究家の視点から、涙袋の正体や、涙袋がない状態とはどういうことなのか、原因、そして自力で育てるための具体的な方法について解説していきます。

涙袋とは?

涙袋とは、下まぶたのまつ毛のすぐ下あたりにふっくらと浮かび上がる膨らみのことを指します。笑ったときや微笑んだときにより強調され、表情に柔らかさや親しみやすさを加えます。

解剖学的には、涙袋は「眼輪筋(がんりんきん)」という筋肉の下部分が働くことで生まれるふくらみです。眼輪筋は目のまわりをぐるっと囲んでいるドーナツ状の筋肉で、まばたき、目を閉じる、目をすぼめるなどの動きを担っています。そのうち、下まぶたにある部分がしっかり働き、さらに皮下脂肪や皮膚のハリが保たれていると、自然に涙袋として現れるのです。

涙袋がないとはどういう状態?

涙袋がない状態とは、下まぶたにふくらみが見られず、目元がフラットな印象に見えることを指します。

この状態自体が悪いわけではなく、むしろ「知的で涼しげ」「すっきり洗練された目元」という印象を与えることもあります。実際、涙袋がないことで大人っぽさやクールさを引き立てている方も少なくありません。

一方で、多くの方が、涙袋がないと「柔らかさが足りない」「疲れて見える」と感じるのには理由があります。人は無意識のうちに、目元の小さなふくらみや陰影を「健康的」「若々しい」と結びつけて判断しています。涙袋があると、笑ったときに下まぶたがふんわり持ち上がり、光を受けて自然な立体感と動きが生まれます。その変化が笑顔の一部として認識され、親しみやすさや若さにつながるのです。

さらに、涙袋の有無には肌のハリも深く関わっています。下まぶたのふくらみは、眼輪筋の下部がしっかり働き、なおかつ皮膚にハリがあることで際立ちます。逆に、眼輪筋が衰えて支えが弱まったり、皮膚の弾力が失われたりすると、涙袋が出にくくなり、フラットで張りのない目元に見えます。その結果、「疲れている」「老けて見える」という印象につながってしまうのです。

つまり、涙袋がないことは必ずしも欠点ではないものの、筋肉や皮膚の衰えによって涙袋が消えてしまった場合には、年齢的な疲れや老け感を強めてしまう要因になるのです。

涙袋がない原因

涙袋がない理由は、単に生まれつきの骨格や脂肪のつき方だけではありません。表情筋研究家の視点では、以下の要因が大きく関わっていると考えられます。

1. 姿勢の崩れ

猫背や巻き肩などで頭が前に出る姿勢をしていると、顔全体の筋肉がダランと外に開いた状態になります。すると下まぶたの筋肉(眼輪筋の下部)が内側に働きにくくなり、涙袋が出にくくなるのです。

2. 表情の使い方のクセ

笑うときに口角だけを横に引いて目を動かさないクセ、または目を大きく開くことが少ない生活習慣(スマホ・PC作業中心など)も、下まぶたの筋肉を使う機会を減らします。その結果、涙袋が育たず、目元が平坦に見えます。

3. 加齢による筋力低下とハリ不足

年齢とともに眼輪筋の力が弱まり、皮膚や皮下脂肪のハリも減少します。涙袋は「筋肉+ハリ」があってこそ目立つ部分なので、どちらも失われると涙袋が目立たなくなります。

このように、涙袋がない背景には「姿勢」「表情のクセ」加齢による筋力とハリの低下」といった日常的な要因が大きく関わっています。つまり、涙袋がないのは単なる骨格や体質だけの問題ではなく、筋肉の使い方や働きの衰えが大きなカギを握っているのです。

だからこそ、涙袋を取り戻したい・育てたいと考えるなら、土台となる筋肉――特に目の周りを取り囲む「眼輪筋」へのアプローチが欠かせません。

涙袋を育てるために大切な「眼輪筋」

眼輪筋(がんりんきん)は、目の周囲をぐるりとドーナツ状に取り囲む表情筋です。大きく「眼窩部」「眼瞼部」「涙嚢部(涙丘部)」に分けられ、瞬きを司る内側の細かい部分から、目を強く閉じるための外側の大きな部分まで、複雑な構造を持っています。

この筋肉は顔面神経(第Ⅶ脳神経)に支配されており、瞬き・まぶたの開閉・目の細めなど、私たちが一日に何千回も無意識に行っている動作を担っています。眼球を乾燥から守り、涙を均一に広げる役割もあるため、美容だけでなく目の健康維持においても不可欠な筋肉です。

涙袋に関わるのは特に下まぶたの眼瞼部と呼ばれる領域です。ここがしっかり働くと、下まぶたが内側にスッと引き寄せられ、眼球に沿うようにふくらみが出ます。このふくらみこそが「涙袋」として見えてくるのです。

しかし、この部分の筋力が低下すると、下まぶたが外側に開いて平坦になり、涙袋は目立たなくなります。さらに、眼輪筋の衰えは皮膚の支えを失わせるため、真皮層のコラーゲンやエラスチンの減少と相まって、目元全体のハリ不足を招きます。その結果、涙袋がないだけでなく、クマやたるみが強調され、「疲れて見える」「老けて見える」といった印象を与えてしまうのです。

つまり、涙袋を育てるというのは単に「ふくらみをつくる」ということではなく、眼輪筋の下部を鍛えて下まぶたに支えを取り戻し、血流や代謝を促して皮膚のハリを保つことでもあります。筋肉と皮膚、両方の観点から目元を若々しく整えるために、この小さな筋肉を正しく使えるようになることが非常に重要なのです。

「ピクトレ下まぶた」で涙袋を育てよう

涙袋をつくるためには、眼輪筋の下部分をきちんと働かせることが大切です。そのためのトレーニングが 「ピクトレ下まぶた」 です。

やり方はシンプルで、下まぶたを上下にピクピクと小さく繊細に動かすだけ。ただし、最初は下まぶたが動いている感覚をつかみにくい方も多いでしょう。そんなときは、目線をほんの少し上にしてみてください。下まぶたにスイッチが入りやすくなり、効いている感覚を得やすくなります。

目線を少しずつずらしながら、自分にとって下まぶたが一番動きやすい角度を探してみましょう。コツは「頑張りすぎないこと」。力を入れすぎると、眉間や額にしわが寄ってしまうので注意してください。

小さな動きを丁寧に積み重ねることで、下まぶたの筋肉がしなやかに働き、自然な涙袋が少しずつ育っていきます。

① 準備
指の腹を下まぶたに軽く当てます。
② 動かし方
下まぶたをピクピクと10回上下に動かします。
③ 繰り返し
①〜②を1セットとして、これを3〜5セット行います。

はじめはピクピクと下まぶたを上下させる感覚がわかりづらいかもしれません。
すぐにわからなくても大丈夫。

大切なのは涙袋があるかどうかより、どう見せたいか

涙袋がある顔が必ずしも「完璧」というわけではありません。文化や時代によって美しさの基準は変わります。例えば日本や韓国では、K-POPアイドルや人気女優の影響もあり、涙袋のある目元が「かわいらしさ」「若々しさ」の象徴として人気を集めてきました。そのため「涙袋がないと疲れて見える」「物足りない」と感じる方が増えています。

けれど世界的に見ると、涙袋が目立たないすっきりとした目元を魅力とする文化もあります。涙袋がないからといって美しさが損なわれるわけではなく、むしろ「知的でクール」「洗練されている」という印象につながることもあるのです。大切なのは「涙袋の有無」ではなく、自分がどんな目元でありたいかということです。

もし「少しでも柔らかさが欲しい」「若々しいハリを取り戻したい」と感じているのなら、その願いは叶えることができます。涙袋は単なる脂肪の膨らみではなく、眼輪筋という筋肉が正しく働くことで自然に浮かび上がる“表情の一部”。つまり、眼輪筋をトレーニングすれば、自力で涙袋を育てることができるのです

小さな筋肉を意識するだけで、目元の印象は驚くほど変わりますよ

とはいえ、最初から下まぶたを思うように動かせる人はほとんどいません。実際に私の生徒さんの中にも「ピクトレ下まぶたをやってみたけど全然動かない」「効いている感じが分からない」と戸惑っていた方がいました。でも、レッスンで一緒に動きを確認し、細かいコツを丁寧に修正していくうちに、少しずつ感覚がつかめるようになり、数か月後には自然な涙袋が現れてきたのです。そのときの喜びと自信にあふれた表情はとても印象的でした。

このように、涙袋を育てるのは一夜でできることではありません。けれど正しい方法を学び、焦らずに続けていけば、必ず目元は変わっていきます。そして、その変化は単なる外見の改善にとどまらず、「自分の顔を自分でデザインできる」という自信にもつながっていきます。

MYメソッドアカデミー

「ピクトレ下まぶた」をやってみて難しかったり、「これで合っているのかな」と不安に思ったりした方も大丈夫です。顔の学校「MYメソッドアカデミー」では、専門家が一人ひとりの動きを丁寧に確認し、分かりやすく指導しています。最初はできなかった生徒さんが笑顔で「できた!」と実感できるようになるのも、この場ならでは。仲間と一緒に学べる環境もあるので、自然と継続できるのも魅力です。

涙袋は、あなたの力で育てられます。ぜひ一緒に、ハリのある若々しい目元を手に入れていきましょう。

一覧に戻る

TOP