
鏡を見たときに「なんとなく顔の下半分がふっくらして見える」と感じたことはありませんか? いわゆる「下膨れ顔」と呼ばれる状態です。丸顔や面長のように骨格が大きく影響する顔型とは異なり、下膨れは筋肉の使い方や生活習慣によって強調されてしまうケースが少なくありません。
表情筋研究家の視点から見ても、下膨れは「年齢による仕方のないもの」ではなく、日常の顔の使い方を見直すことで改善・予防できる可能性が高いのです。今回はその仕組みを、解剖学的な観点も交えて詳しくお伝えします。
下膨れとはどういう状態?
下膨れとは、顔の下半分——特に頬からあごにかけてのラインが横に広がり、丸みを帯びて見える状態を指します。
特徴としては以下のような状態が挙げられます。
下膨れ顔の特徴
- フェイスラインがもたついて見える
- あご下や口横に余白が目立つ
- 「太っている」「むくんでいる」と思われやすい
- 笑っても頬が持ち上がらず、口元だけが動いているように見える
ダイエットでは解決しないことも

下膨れは「顔が丸く見えるから太っているせいだ」と思い込む方が多く、ダイエットで解消しようとするケースも少なくありません。もちろん体重増加やむくみが一因になることはありますが、痩せたからといって必ずしも下膨れが解消するわけではないのです。
実際、痩せていても下膨れに見える人がいます。その理由は、脂肪ではなく「筋肉の使い方」が原因だからです。
頬をしっかりと持ち上げる大頬骨筋が働いていないと、重力に逆らえず、脂肪や皮膚が下にたまってしまいます。すると体型に関係なく、顔の下半分がふくらんで見えてしまうのです。
また、急激なダイエットによって脂肪だけでなく筋肉も落ちてしまうと、支えがなくなり、むしろ下膨れ感が強調されることもあります。つまり、下膨れ対策は「痩せる」だけでは不十分であり、むしろ表情筋を正しく使い、鍛えることこそが重要なのです。
典型的な誤解:むくみ・脂肪だけの問題じゃない

「下膨れ=むくみや脂肪のせい」と考えるのも、よくある誤解のひとつです。もちろん、塩分過多や睡眠不足によるむくみが一時的に下膨れを強調することはあります。しかし、それが根本原因ではありません。
本質的には、 頬を支える筋肉(大頬骨筋や小頬骨筋など)が使われず、下に引き込まれている状態 が下膨れをつくります。むくみや脂肪はあくまで「上にのって強調している要素」にすぎないのです。
だからこそ、下膨れを根本的に解消するには、マッサージやダイエットだけでなく「筋肉を目覚めさせること」が必要になります。頬を上に持ち上げる意識を取り戻すことが、フェイスラインをすっきりさせる最短ルートです。
なぜ頬を使わない笑い方が定着しやすいのか?
下膨れの方に多いのが「口先だけの笑い方」。では、なぜ頬を大きく動かさずに、口だけで笑うクセがついてしまうのでしょうか?
理由は大きく3つあります。
1.人前で大きく笑うのを控える心理

学生時代に「笑い方が大きい」「歯ぐきが見える」などと言われた経験から、無意識に笑顔を抑えるようになってしまう方が少なくありません。結果として、頬を動かさない小さな笑い方が習慣になります。
2.日常で表情を出す機会が減っている

マスク生活や在宅ワークなど、人と直接顔を合わせる時間が減ると、表情筋を大きく使う機会が激減します。笑っているつもりでも、実際には頬がほとんど動いていないことが多いのです。
3.口周りの動きだけで会話が成立してしまう

会話は口輪筋(口のまわりの筋肉)を使えば成立してしまうため、頬や目元を動かさなくても生活に支障はありません。便利さゆえに「口先だけで表情を作る」という癖が強まっていきます。
こうした心理的・生活習慣的な要因が積み重なり、「頬を使わず口だけで笑う」というスタイルが定着してしまうのです。
けれども安心してください。これはあくまで“使い方の癖”であり、鍛え直すことで必ず変えていけます。
下膨れになる原因
1. 口周りばかりを使う習慣

下膨れの方に共通しているのは「口だけで表情を作る」クセです。
例えば、
- 小さく口角を動かすだけの笑顔
- 口先だけで喋る
- 頬を大きく動かす表情が少ない
こうした習慣が続くと、頬を支える大頬骨筋や小頬骨筋が使われなくなり、顔の下方向に重力がかかっていきます。その結果、あご下や口横にお肉がたまりやすくなるのです。
2. 豪快に笑う習慣が少ない

「下膨れの人はあまり大きく笑わない」という印象を持たれることもあります。実際に、頬の筋肉を大きく持ち上げて笑う習慣が少ないと、大頬骨筋が衰えやすくなり、口元だけの小さな笑顔が定着してしまいます。
3. 姿勢や噛み癖

猫背やうつむき姿勢は、顔の下半分に重心をかけやすくします。また、片側だけで噛むクセがあると、頬の筋肉の使い方がアンバランスになり、左右非対称の下膨れにつながることもあります。
4. 加齢による脂肪の下垂

年齢とともに皮下脂肪を支える筋力や靭帯が弱まり、脂肪が下がってきます。本来なら大頬骨筋が頬を持ち上げて支えてくれるのですが、この筋肉が衰えると脂肪は重力に負けて顎下へ移動し、下膨れを強調します。
解剖学的に見る下膨れ
顔の表情筋の中で、下膨れ改善に特に重要なのが 大頬骨筋(だいきょうこつきん) です。
大頬骨筋は、頬骨(目の横にある硬い骨の出っ張り)から口角に向かって斜めに走る筋肉です。長さはおよそ5〜6cm。人によって太さや発達の度合いに差がありますが、表情をつくるうえで非常に大切な「笑顔の筋肉」です。
主な働きは:
- 口角を上げる
- 頬を持ち上げて立体感を出す
- 活き活きとした笑顔を作る
つまり、大頬骨筋は「顔の若々しさと明るさ」を決定づける筋肉なのです。
一方で、大頬骨筋が十分に使われないと、次のような変化が現れます。
大頬骨筋が十分に使われないと:
- 笑顔が「口先だけ」になり、表情がぎこちなく見える
- 頬が下に引き込まれ、顎下に余分なお肉がたまりやすい
- フェイスラインがもたつき、下膨れ顔に見える
- 目元まで笑いが届かず、無表情・疲れ顔の印象が強まる
つまり下膨れは、単なる脂肪やむくみではなく「大頬骨筋がサボっているサイン」と言えます。
他の筋肉との関係
顔の表情は、ひとつの筋肉だけで成り立つものではありません。大頬骨筋は、他の筋肉と連動して動いています。

小頬骨筋
大頬骨筋のすぐ内側を走り、上唇を引き上げる働きがあります。大頬骨筋と協力して、頬全体を高く持ち上げます。
口角挙筋
口角を真上に引き上げる筋肉。大頬骨筋が斜め上に引くのに対して、縦方向のサポートを行います。
口輪筋
口の周囲を取り囲む筋肉。会話や食事でよく使われますが、ここばかりが優位に働くと頬の筋肉は使われにくくなります。
このように、大頬骨筋がきちんと働くことで「口輪筋中心の小さな笑い」から「頬全体を使った立体的な笑い」に切り替わり、下膨れの印象を改善することができるのです。
大頬骨筋は、単なる「笑顔の筋肉」ではなく「頬の位置を決める支柱」。この筋肉が弱まると、重力に逆らえず頬が下に落ち込み、下膨れやフェイスラインのもたつきにつながります。
逆に言えば、大頬骨筋を鍛えて意識的に使えるようになることで、顎下のお肉を上へと引き上げ、すっきりとした顔立ちを取り戻せるのです。
「頬のVトレ」で大頬骨筋を鍛えよう
大頬骨筋を目覚めさせるトレーニングとしておすすめなのが「頬のVトレ」です。
指の形が難しいと感じる場合は、無理にこだわらず、手のひら全体で頬を下から支えるようにして行っても構いません。
大切なのは、形よりも「頬を上に持ち上げる感覚」をつかむこと。繰り返し続けることで、大頬骨筋が自然に働き、「口先だけで笑う」のではなく「頬をしっかり使って笑う」感覚が養われていきます。
- ① 笑顔
- 目を大きく開き、上の歯を8本見せて笑います。

- ② 指で押し上げ
- 親指と人差し指を使い、エラの下から頬のお肉を下から持ち上げて、5秒キープします。

- ③ 手放し
- 手を外して、さらに5秒キープします。

- ④ 繰り返し
- ①〜③を1セットとして、これを3〜5セット行います。

下膨れ改善のカギは“継続”
大頬骨筋は、単なる「笑顔の筋肉」ではなく「頬の位置を支える柱」のような存在です。ここが弱まると、重力に抗えず頬が下に落ち込み、下膨れやフェイスラインのもたつきが目立ってしまいます。けれども、この筋肉を意識して鍛え直すことで、頬は再び本来の位置を取り戻し、顎下にたまりやすいお肉を上へと引き上げることができます。結果として、横顔も正面もすっきりとした印象になり、笑顔そのものが若々しく、明るく見えるのです。
もちろん、一度のトレーニングで劇的に変化するわけではありません。表情筋は日々の積み重ねでしか育たないため、「継続すること」こそが最大のカギです。毎日ほんの数分でも大頬骨筋を意識して動かす習慣を持てば、新しい顔の使い方が定着して、半年後、1年後には驚くほどの変化を実感できるでしょう。

頬を上げる力が、フェイスラインを変えます!
実際に、私が主宰する顔の学校で学んだ生徒さんの中にも、長年気になっていた下膨れが改善した方が数多くいらっしゃいます。フェイスラインがすっきりしただけでなく、「笑顔が自然になった」「写真を撮られるのが楽しくなった」という声をいただくことも多いのです。こうした変化は、ただ痩せたからではなく、大頬骨筋をはじめとする表情筋を正しく使えるようになったからこそ得られた結果です。


そして何より、変化を支えているのは「一人で頑張らなくていい環境」です。同じ悩みや目標を持つ仲間と一緒に学び合うことで、挫折せずに続けやすくなります。励まし合いながら取り組むと、トレーニングが「義務」ではなく「楽しみ」に変わり、自然と習慣になっていきます。
大切なのは「私は変われる」という前向きな気持ちと、顔に向き合う小さな一歩を重ねること。あなたの未来の表情は、今日からの積み重ねで必ず変わっていきます。
MYメソッドアカデミー

「もっと本格的に学んで、正しい方法で顔を変えていきたい」と感じたら、顔の学校 「MYメソッドアカデミー」 がおすすめです。
表情筋研究家の視点から科学的に基づいたメソッドを体系的に学べるのはもちろん、仲間と一緒に励まし合いながら継続できる環境が整っています。
楽しみながら顔を育て、理想の笑顔やフェイスラインを一緒に手に入れていきましょう。