間々田 佳子

二重あごは、「老けて見える」「太って見える」といった印象を与える原因のひとつです。
マスクで隠す機会が減った今、「フェイスラインをすっきりさせたい」という声も増えてきています。

ですが、過度に心配する必要はありません。
表情筋のしくみを正しく理解し、ある筋肉に意識を向けることで、シャープなフェイスラインを取り戻すことは十分可能です。

今回は、表情筋研究家の視点から、二重あごの主な原因と対策、そしてその鍵を握る筋肉「広頚筋(こうけいきん)」について、わかりやすく解説していきます。

二重あごとは?

ふと鏡を見たときに、「あれ? あごの下にもうひとつ……?」と感じたことはありませんか?
これが、いわゆる「二重あご」です。

二重あごとは、あごの下に脂肪やたるみが重なって、まるで“あごが二つある”ように見える状態のこと。
フェイスラインがぼやけ、顔全体が大きく見えたり、実年齢よりも老けた印象を与えてしまう原因にもなります。

二重あごになる主な原因4つ

「少し体重が増えただけなのに、あごの下がぷっくり」
「頑張ってダイエットしたのに、なぜかフェイスラインだけ変わらない」

そんな経験はありませんか? 二重あごは単なる脂肪だけが原因ではなく、実は複数の要因が絡み合ってできるものなのです。ひとつずつ見ていきましょう。

1. 表情筋の衰え

顔の筋肉、特にあご下から首にかけての筋肉は「見えにくい」「動かしにくい」ため、年齢とともに自然と衰えやすくなります。

中でも、無表情で過ごす時間が長い、あまり人と話さない、顔を動かす機会が少ない、などの習慣があると、顔全体の筋肉が“サボりがち”になります。筋肉が衰えると、皮膚や脂肪を引き上げる力が弱まり、下へ下へと重力に引っ張られてたるみが発生。あご下のゆるみが固定化してしまうのです。

2. 姿勢の悪さ

猫背や前かがみの姿勢でいると、首が前に突き出たような「ストレートネック」状態になりやすくなります。
この姿勢では、首の前側にある筋肉が縮こまり、血流やリンパの流れが悪くなって、老廃物がたまりやすくなるのです。

また、常にスマホを見下ろしている姿勢は、あごの下にシワとたるみを生み出す大きな要因。無意識のうちに「たるみやすい環境」を自分で作ってしまっているのです。

3. 加齢による肌のたるみ

鏡を見る中年女性

年齢を重ねるにつれて、肌のハリを支えるコラーゲンやエラスチンの量が減少します。さらに皮膚の保水力や弾力が失われることで、あご下の皮膚が余るようになり、たるみやすくなります。

この“肌のゆるみ”は、たとえ体重が増えていなくても、二重あごのように見せてしまうことがあるのです。まさに「肌の老化」が見た目年齢に直結してしまうポイント。

4. 脂肪の蓄積とむくみ

代謝の落ちる中高年期は、顔周りの脂肪が落ちにくく、特にあご下に脂肪がたまりやすくなります。加えて、運動不足や塩分過多、水分不足などによるむくみも影響します。

むくみは一時的なもののように思われがちですが、放っておくと定着して脂肪と結びつき、やがて「定着したたるみ」に。これが二重あごとして目に見える形になるのです。

ダイエットだけでは解消しない

「だったら痩せればいいのでは?」と考える方も多いかもしれません。もちろん、体重が減ればフェイスラインがスッキリするケースもあります。

しかし、 体重が落ちても、たるんだ皮膚や衰えた筋肉は自動では引き締まりません。

顔の下には、私たちの意識にはのぼりにくい「表情筋」と呼ばれる細かく複雑な筋肉群が張り巡らされています。これらの筋肉は、まばたき、笑顔、口元の動きなど、日常的な表情の動作を支えています。

手や足など体の筋肉は、使わなければ衰えていきますよね? 表情筋も同じ。動かす機会が少なければ衰えていきます。

つまり、体の筋肉を動かして鍛えるのと同様に、顔の筋肉も意識的に動かして鍛えなければ、皮膚を内側から支える「土台」が弱まってしまうのです。

体重が減ると、脂肪も落ちますが、同時に皮膚の下でふくらみを支えていたものがなくなります。
すると本来、筋肉が引き締めるべき空間に“余り”が生じ、結果として皮膚がたるんで見えるのです。

あご周りの場合、その「支え」のメインとなるのが、特に広頚筋(こうけいきん)という首〜あご下を支える筋肉です。

この筋肉が弱いままでは、たとえ脂肪が落ちても、フェイスラインはぼやけ、あご下はたるんだまま。むしろ、年齢を感じさせる見た目になってしまう可能性すらあります。

つまり、二重あごの対策は、ダイエットだけでは不十分
根本的に解消するためには、広頚筋をはじめとした表情筋を意識的に鍛えることが必要不可欠なのです。

すっきりフェイスのカギを握る「広頚筋」

広頚筋(こうけいきん)は、首の前面に広がる「皮筋(ひきん)」と呼ばれる筋肉の一種。胸元(鎖骨・胸骨)あたりから始まり、あご下を通って口角のあたりにまで伸びており、首から顔にかけての広い範囲を覆っています。

この筋肉は、笑ったときに首にうっすらスジが出るような動きや、口角を下げる動作などにも関わっています。つまり、首元を支えながら、表情づくりにも大きく関与している、“首と顔をつなぐ表情筋”といえるのです。

広頚筋の特徴

薄くて広い

広頚筋は非常に薄い筋肉ですが、広い範囲を覆っています。そのため、たるみやすくもありますが、鍛えれば大きな見た目の変化が期待できます。

皮膚と強く結びついている

この筋肉は皮膚と密接に結びついており、動くことで皮膚を持ち上げたり、引き締めたりします。

重力の影響を受けやすい

皮膚に近いため、加齢や姿勢、生活習慣の影響がダイレクトに現れやすい筋肉です。

広頚筋が衰えると何が起きる?

広頚筋が衰えると、あご下から首にかけての「ハリ」が失われ、重力に逆らえなくなります。その結果、以下のような変化が起こります。

広頚筋が衰えると

  • あご下のたるみが進行し、二重あごが定着
  • 首と顔の境界線がぼやけて、老けた印象に
  • 首元の皮膚がしぼんだように見えて、「首年齢」が上がって見える
  • 口角が下がり、不機嫌そうな表情に見られやすくなる

つまり、広頚筋の衰えは見た目の印象を大きく左右する老け顔や不機嫌顔の引き金となるのです。

日常のクセや姿勢が知らず知らずのうちに広頚筋を衰えさせている

では、具体的にどのようなことが広頚筋の衰えにつながるのでしょうか?

1. 姿勢の悪さ(特にスマホ姿勢・前かがみ)

広頚筋は、首の前面から下あご、口角あたりまでをつなぐ筋肉。
本来、頭の重みを支えながら自然に伸び縮みする構造になっていますが、スマホやPC作業で頭が前に出た姿勢が続くと、筋肉が“たるんだ状態”で固定されやすくなります。

この状態が慢性化すると:

  • 筋肉の収縮運動が減る
  • 血行やリンパの流れが悪くなる
  • 老廃物がたまりやすくなる

という悪循環に陥り、フェイスラインや首のたるみの原因になります。

2. 無表情で過ごす時間の増加

広頚筋は、笑ったり、話したり、驚いたりといった「感情表現」に連動して動く筋肉です。
しかし、現代では次のような習慣によって表情を動かす機会が減っています。

  • スマホやパソコンに集中して無表情のまま長時間過ごす
  • リモートワークの普及等で人と直接会って話す機会が減少している
  • メールやLINEなど表情を使わないコミュニケーションが増えている

こうした「表情を使わない時間」が日常に積み重なることで、広頚筋を含む顔や首の筋肉が少しずつサボるようになり、衰えてしまうのです。

3. 加齢による筋力・弾力の低下

年齢を重ねると、体の筋肉と同様に、顔や首の筋肉も自然と衰えていきます。
広頚筋は皮膚に近いところにあるため、筋肉が痩せたり硬くなったりすると、皮膚がそのまま垂れ下がりやすくなるのです。

また、加齢によって皮膚のハリを保つコラーゲンやエラスチンも減少するため、筋肉の衰えと相まってたるみが顕著になります。
これは中高年に限らず、若くても急激なダイエットや生活習慣の乱れで早く現れる場合もあります。

4. 運動不足による血流・リンパの停滞

広頚筋は薄くてデリケートな筋肉ですが、そのすぐ下にはリンパ節や血管が通っています。運動不足や代謝の低下によって血流が悪くなると、首まわりの筋肉にも栄養が届きにくくなり、老廃物も溜まりやすくなります。

このような状態では、筋肉は硬くこわばり、柔軟性を失って動きにくくなってしまうため、ますます筋力が落ちるという悪循環に陥ります。

広頚筋を「意識して鍛える」ことが大切

広頚筋の存在や働きは、日常生活ではほとんど意識されません。だからこそ、この筋肉を“意図的に”鍛えることが、二重あご・フェイスライン・首元の若返りのカギとなります。

スキンケアやマッサージも大切ですが、それだけでは「皮膚表面」にとどまります。
根本的に改善したいなら、広頚筋という“表情筋の土台”を意識的に鍛えることが、美しいフェイスラインへの最短ルートです。

二重あごを解消するトレーニング

広頚筋は、表情のクセや姿勢、生活習慣と密接に関係しています。しかも、体の筋肉とは違って自然には鍛えられにくいため、意識して動かさない限りどんどん衰えてしまうのです。

ですが逆に言えば、生活の中に少しの「動き」を加えるだけで変化が出やすい筋肉でもあります。

そこで今回は、ぜひ日常生活に取り入れていただきたいトレーニングをご紹介します。

あごステップ

① 舌を上あごに押し当てる
舌全体を上あごに押し当てます。あごの下、首の前面に圧を加えたまま、5秒キープします。
② 目線を斜め45度
圧を加えた状態を保ったまま、目線を斜め45度上げ、遠くを見ます。
③ あごの上下運動
あごを持ち上げる・下げるを、5回繰り返します。
④ 繰り返し
①〜③を1セットとして、これを1〜3セット行います。

まずは①ができたらOK。舌を上あごに押し当て、広頚筋の存在を感じながらキープする練習を繰り返します。
日常生活でも「舌は上あご」が基本ポジションです。
これに慣れてきたら、あごの上げ下げの動作も加えていきましょう。

美しいフェイスラインは意識”から生まれる

二重あごやフェイスラインのゆるみは、決して「年齢」や「体重」のせいだけではありません。日々の姿勢や表情、ちょっとした習慣の積み重ねが、今の見た目をつくっています。

だからこそ、広頚筋を意識して動かすことは、これからの自分の印象を変える第一歩。
たった1分でも、「筋肉に気づいてあげる」ことで、顔や首まわりは確実に応えてくれますよ。

今日から『ベロは上あごにベトッ』を合言葉に生活していきましょう!

MYメソッドアカデミー

「あごステップ」で首の前面に圧をかける感覚がわかりにくい方は、ぜひ一度、顔の学校「MYメソッドアカデミー」をのぞいてみてください。

経験豊富なインストラクターのサポートで、感覚がしっかりつかめるようになりますよ。

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