
人前に立つと手が震える、声が上ずる、頭が真っ白になる——。そんな経験を重ねるうちに、「私はあがり症だから……」と、自分自身に“苦手意識”のレッテルを貼ってしまっていませんか?
でも実は、あがり症は「性格」ではなく、一時的に起こる“状態”のひとつ。つまり、整えることができるのです。
かくいう私自身も、もともとは緊張すると体が固まり、うまく笑えないタイプでした。でも、日常的に表情筋を動かすようになってから、少しずつ自信がつき、人前でも落ち着いて話せるようになってきました。
この自身の経験からも感じるのは、「顔の筋肉の使い方」と「心の状態」は、実は深くつながっているということ。
今回は、表情筋研究家の視点から、あがり症のメカニズムと、表情筋トレーニングがどのように改善をサポートしてくれるのかを、くわしくお伝えしていきます。
あがり症とは? その正体は“自律神経の乱れ”
あがり症とは、主に人前で話す、注目される場面で過度に緊張してしまう状態のことを指します。正式には「社会不安障害」の一部とも言われ、症状の程度は人それぞれ。以下のような身体反応が現れることが特徴です。
自律神経の乱れの特徴
- 手足の震え
- 声が震える、かすれる
- 顔がこわばる、赤くなる
- 心拍数の上昇、動悸
- 汗をかく
- 頭が真っ白になり、言葉が出ない
これらはすべて、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れているサインです。緊張時は交感神経が優位になり、身体が“戦うか逃げるか”のモードになります。その結果、心身が過敏に反応し、「うまく話せない」「顔が引きつる」といった表面化した症状につながるのです。
表情筋が“あがり症克服”に役立つ理由

表情筋は、感情と密接に結びついた筋肉群です。驚き、喜び、緊張、不安などの感情が表情として現れるのは、この筋肉がダイレクトに反応しているから。
実はこの関係は双方向です。感情が筋肉に伝わるだけでなく、筋肉を動かすことで感情にも影響を与えるのです。これを心理学では「表情フィードバック仮説」と呼びます。つまり、「笑顔を作ると、心が少し軽くなる」「深呼吸とともに表情をゆるめると、緊張が和らぐ」というのは、単なる気の持ちようではなく、科学的な裏付けがある反応なのです。
この仕組みを使えば、あがり症の症状にもアプローチできます。
表情筋×神経×心のつながり
あがり症に悩む人にとって、「心を落ち着けたい」と思う場面は多くあるでしょう。ですが実際は、「心」だけをコントロールすることは非常に難しいものです。そんなときに有効なのが、「筋肉」や「呼吸」など、身体からのアプローチです。特に、顔の筋肉である表情筋は、神経系・心理状態と密接につながっており、“心と体をつなぐ架け橋”のような存在です。
ここでは、あがり症における表情筋トレーニングの主なメリットを3つの観点から詳しく解説していきます。

1. 顔のこわばりを解消し、リラックスした印象を作る

緊張状態にあるとき、私たちの顔は思っている以上に硬直しています。たとえば、眉間にシワを寄せる、目を見開く、口元をきゅっと引き締めるなど、無意識に「戦闘モード」に入っているのです。これは交感神経が優位になることによる身体的反応であり、相手にも「緊張している」「余裕がない」といった印象を与えてしまいます。
表情筋トレーニングでは、眉間・口元・頬・まぶたなど、顔全体の筋肉を丁寧に動かし、こわばった表情を一つずつほどいていきます。これにより、筋肉が本来の柔軟性を取り戻し、自然で穏やかな表情が生まれるのです。
顔がゆるむと、脳も「安心してよい」と認識し始めます。これは、いわば“逆転の発想”。緊張を無理に抑えるのではなく、まずは表情をゆるめることで心を解放するというアプローチです。こうして作られる「リラックスした印象」は、自分自身の安心感にも、周囲との良好なコミュニケーションにもつながっていきます。
2. 呼吸と自律神経のバランスが整う

表情筋は、自律神経と深く関係しています。特に、顔周辺には多くの神経が張り巡らされており、ここを動かすことは“神経へのマッサージ”ともいえる働きをします。
あがり症の時、私たちは無意識に呼吸が浅くなり、交感神経が過剰に優位になります。すると心拍が上がり、声が震え、パフォーマンスが著しく低下してしまいます。
ここで効果的なのが「表情筋×呼吸」の連動トレーニングです。たとえば、頬をふくらませながら息を吐く、ゆっくりとした笑顔を作りながら深呼吸をする、といった動きは、筋肉と神経の両方に作用し、副交感神経を刺激します。
副交感神経が働き始めると、呼吸が深くなり、心拍が落ち着き、心身が「落ち着いていて大丈夫」というモードに切り替わります。これは一時的な安心ではなく、“安心を生み出す身体の習慣”として定着していくのが特徴です。
3. 自分の状態を“整える習慣”が身につく

表情筋トレーニングの大きな利点は、単に筋肉を動かすこと以上に、「自分の内面を整える習慣」が育まれることです。
日々、顔を動かすトレーニングを続けていると、「今日は顔がこわばっているな」「いつもより口角が下がっているかも」といった微細な変化に気づけるようになります。これは、心と体の“ズレ”を感じ取る力です。
この感覚を持つことで、緊張が高まりそうな場面でも「あ、今ちょっと顔が強張ってるな。リセットしよう」と、自分で心身をチューニングできるようになります。まさに“自分で整えられる力”が育つのです。
また、「自分の表情に目を向ける」ということ自体が、自尊感情を高めることにもつながります。自分の変化に気づける、自分に手をかける、それが「私は大丈夫」という心の基盤となり、あがり症の根本的な不安の軽減につながるのです。
「ストレスリセット」で顔と体の強張りを解消
ここからは自力で緊張を克服する具体的な方法をお伝えします。
まずは舌を思い切り出す「ストレスリセット」で顔と体の強張りを解消しましょう。
- ① 目を開く
- 目を大きく見開きます。鼻から息を吸い、吐きながら、思い切り舌を出します。息を吐ききったら、鼻から息を吸いながら、舌を戻します。これを3回繰り返します。

- ② 深呼吸
- 目を閉じて深呼吸。顔全体の緊張が緩み、血行が良くなっていることを確認します。

- ③ 繰り返し
- ①〜②を1セットとして、これを3〜5セット行います。

なぜ「舌を出す」ことでこわばりがリセットされるのか
舌を大きく出す動作は、見た目以上に多くの筋肉を使います。特に以下のような筋肉が関与します:
舌を大きく出す時に働く筋肉
- 舌筋群(舌を構成する筋肉)
- 顎舌骨筋(あごの内側の筋肉)
- 舌骨筋(首と舌をつなぐ筋肉)
- 広頚筋(首まわりの皮膚と表情筋をつなぐ筋肉)
- 口輪筋(口の周り)や頬筋(頬)などの表情筋全体
これらは、いずれも緊張やストレスによってこわばりやすい筋肉です。たとえば、緊張状態にあると無意識に食いしばったり、舌を押しつけたり、首まわりが固くなったりします。
舌を思い切り前に出すことで、それらの筋肉が強制的に「脱力と伸展」状態になります。このとき、緊張で縮こまっていた筋肉が一気にゆるみ、表情・首・肩・舌の緊張の連鎖が断ち切られるのです。
舌を出すことと“あがり症”の意外な関係性
あがり症とは、交感神経が過剰に働き、「逃げる・戦う」反応が過剰に出てしまう状態。心拍数の上昇、口の渇き、顔のこわばり、思考の停止などが典型的な症状です。
実は、舌の位置と神経の緊張状態は密接に関わっています。
- 緊張していると、舌が下がって口がポカンと開きやすくなる
- 舌が下がることで、口周りの筋肉が働かず、顔全体がゆるんで見える
- 舌が下がっていると、呼吸が浅くなりやすく、自律神経が乱れる
このような悪循環を断ち切るために、「舌を思いきり出す」ことで一度リセットをかけるのです。
ポイントは“大胆に、思いきり”
あがり症の人は、「顔を大きく動かす」「声を出す」といった“開く”動作に抵抗感がある場合が多いです。舌を出す動きは、顔の中心を開く動きであり、「抑えていたものを外へ出す」行為でもあります。
これにより
- 緊張していた舌・口周り・首の筋肉が解放される
- 副交感神経が刺激され、呼吸が深くなる
- 顔と心が「ゆるんでいい状態」へと移行しやすくなる
まさに、“体から心をゆるめる”行動なのです。
「ウーニートレ」でいつでも笑顔に
「ストレスリセット」で顔や体の緊張がゆるんだら、次は「ウーニートレ」で柔軟な笑顔の準備をしましょう。
このトレーニングでは、頬筋や大頬骨筋をしっかり動かしていきます。日頃から頬を動かす習慣をつけておくことで、緊張する場面でも自然でやわらかな笑顔がつくれるようになります。
- ① 口をすぼめる
- 口を「う」の形にすぼめます。

- ② にっこり
- 上の歯が8本見えるように口を「に」 の形にして、にっこり微笑みます。

- ③ 繰り返し
- ①〜②を、10回繰り返します。

- ④ セットを繰り返す
- ③を1セットとして、これを2〜4セット行います。
緊張しても、笑顔でいられる自分をつくろう
私たちは、緊張したときほど「笑いたいのに笑えない」「気持ちを切り替えたいのに切り替えられない」と感じるものです。そんなとき、頼りになるのが、日頃から鍛えておいた表情筋です。

緊張した時こそ、“動ける顔”があなたの味方になりますよ
表情筋は、ただ見た目を整えるためのものではありません。筋肉を育てておくことは、笑顔が出やすく、感情をしなやかに表現できる土台をつくること。顔が自然に動くようになると、不思議と心にも余裕が生まれ、自分の中にある“揺るがない軸”を感じられるようになってきます。
いざという時、緊張に押しつぶされそうな場面でも、日々のトレーニングで育てた筋肉が、自分を支え、助けてくれる。顔が動けば心も動き、心が動けば前に進めるのです。
「緊張しても、笑顔でいられる自分」へ。
その第一歩として、今日から“動ける顔”を育ててみませんか?
MYメソッドアカデミー

顔の学校「MYメソッドアカデミー」では、単なる見た目の変化だけでなく、内面から整うための表情筋トレーニング=コアフェイストレーニング®︎を基礎から丁寧に学べます。
緊張に強く、自分らしく輝ける表情を、一緒に育てていきましょう。