間々田 佳子

鏡を見たとき、「唇が薄いな」と感じたことはありませんか?
唇は顔の中でも特に目を引くパーツであり、その厚みや形は表情の印象を大きく左右します。ほんの数ミリの違いでも、若々しく見えたり、華やかに見えたり、逆に寂しげに見えたりするほどです。

実は、この「唇の薄さ」は先天的な要素だけでなく、加齢や日常的な表情の使い方、ちょっとした生活習慣によっても変化していきます
唇は“生まれつき決まったもの”ではなく、育てることができるパーツなのです。

本コラムでは、表情筋研究家の視点から「唇が薄いとはどういうことか」「なぜ唇は薄くなってしまうのか」、そして「どうすればふっくらとした魅力的な唇を育てられるのか」を解説していきます。

唇が薄いとはどういうこと?

「唇が薄い」というと、物理的に上下の唇の厚みが少ない状態を指します。縦幅が狭く、正面から見たときに存在感が小さい印象になります。

ただし、ここで重要なのは「薄い唇=悪い」というわけではないということです。唇が薄いからこそ繊細で上品な雰囲気を醸し出す方もいますし、ファッションや表情の使い方によっては知的で洗練された印象を与えることもあります。

しかし、多くの人が「もっと唇をふっくらさせたい」と願うのは、唇の厚みが「若々しさ」や「健康感」と直結しているからです。血色の良い、立体的な唇は生命力を感じさせ、表情全体を華やかに見せる効果を持っています。

魅力的な唇とは?

魅力的な唇にはいくつかの共通点があります。

1.適度な厚みとボリューム

上唇と下唇のバランスがとれ、立体感のある唇は若々しく魅力的に映ります。

2.自然なカーブ(リップライン)

唇の輪郭がぼやけず、はっきりとしたラインがあると表情にメリハリが生まれます。

3.血色と潤い

乾燥してカサカサした唇よりも、しっとり潤ってほんのり色づいた唇の方が圧倒的に健康的で魅力的です。

4.動きのある唇

唇話す、笑う、歌うなどで自然に豊かな表情をつくれる唇は、人の心を惹きつけます。

つまり、唇の美しさは「形」や「厚み」だけではなく、「筋肉の働き」「血流」「表情の動き」といった要素が総合的に関わっているのです。

唇が薄くなる原因

唇はなぜ薄くなってしまうのでしょうか?大きく分けると以下のような要因があります。

1.加齢による変化

加齢とともに口周りの筋肉や皮膚は衰え、唇のボリュームも減少します。特に「口輪筋(こうりんきん)」という唇の周囲をぐるりと取り囲む筋肉が弱ると、唇が内側に巻き込まれるようにして薄く見えるのです。

また、皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸が減少することで、唇のハリや潤いが失われ、ボリュームダウンしていきます。

2.表情癖による影響

日常の表情習慣も唇の厚みに大きく関わります。

  • 口角を下げるクセ
  • 口を「への字」に閉じる習慣
  • 口をギュッとすぼめる癖

こうした表情の積み重ねによって口輪筋が硬く縮こまり、唇が外に開かなくなっていくのです。

3. 話し方や姿勢のクセ

声を出すときに口を大きく開かず、声だけを喉から出す習慣のある人は唇の可動域が狭くなります。結果として口元の筋肉が弱まり、唇が痩せて見える原因に。

また、上品に振る舞おうとする人ほど口角を控えめに動かし、口をすぼめて発音する傾向があります。こうした「美意識の高さ」がかえって唇を薄くしてしまうこともあるのです。

4. 性格・気質との関係

表情筋研究家として多くの方を見ていると、性格的な傾向も関係していると感じます。

  • 頑張り屋さんほど、口を窄めて呼吸を止めたり、緊張して口を固めたりしやすい。
  • 控えめな方ほど、大きな口の動きを避けてしまうため、唇を閉じている時間が長くなる。

こうした習慣が重なることで、唇が少しずつ薄くなっていきます。

唇を育てる!対策のカギは「口輪筋」

唇の厚みを取り戻すには、唇を直接とり囲む「口輪筋(こうりんきん)」に注目することが欠かせません。

口輪筋は、口の周囲をドーナツ状に取り囲んでいる表情筋で、厳密には「一つの独立した筋肉」というよりも、周囲の筋肉が口の周りに集まり交差しながら環状をつくっている構造です。

  • 上唇側では「上唇挙筋」「上唇鼻翼挙筋」「大頬骨筋」などが口輪筋と連結
  • 下唇側では「下唇下制筋」「オトガイ筋」などが口輪筋に入り込み
  • 横の方向では「頬筋(きょうきん)」とつながり、頬の動きと連動
  • さらに外側では「笑筋」や「口角下制筋」などとも密接に関わる

つまり、口輪筋は「唇を閉じる・すぼめる・突き出す・開く」といった単純な動きだけでなく、顔全体の表情筋ネットワークの中心的ハブとして働いているのです。

口輪筋が唇の厚みに関わる仕組み

唇の厚みは、単に皮膚や粘膜のボリュームで決まるのではなく、口輪筋の張力と柔軟性に大きく左右されます。

口輪筋が硬く縮こまる

唇が内側に巻き込まれるようになり、薄く見える

口輪筋がゆるみすぎる

輪郭がぼやけ、だらんとした口元になり、やはり厚みを失って見える

口輪筋がしなやかに働く

唇が外にふくらみ、縦の厚みと立体感が出る

また、唇は他の皮膚とは異なり「皮脂腺がほとんどなく、真皮も薄い」という特徴があります。そのため、筋肉の働きがダイレクトに表面の形に影響します。

血流と“ふっくらリップ”の関係

やや専門的な内容になってしまいますが、口輪筋は「顔面神経(第Ⅶ脳神経)」によって支配されています。顔面神経は表情をつくる神経であり、その働きが弱ると唇の動きが乏しくなり、血流も低下して唇が痩せたように見えることがあります。

一方、口輪筋を動かすことで周囲の毛細血管が刺激され、唇の血色や潤いが改善します。リップケアや化粧品では得られない自然な「ふっくら感」は、こうした筋肉と血流の相互作用から生まれるのです。

「リッププッシュ」で弾力のある唇を育てよう

唇を魅力的に育てるには、ただ何となく口を動かすだけでは不十分です。
大切なのは、

  • 口輪筋をリセットしてしなやかさを取り戻すこと
  • 血流を高めて唇の粘膜にハリと潤いを与えること

この2つを意識することがポイントになります。

そのための具体的なアプローチが、表情筋トレーニングの一つである 「リッププッシュ」 です。
シンプルな動きですが、唇を内側からふくらませ、自然な弾力を取り戻すのに役立ちます。

リッププッシュ

① あごの力を抜く
手で触れながらあごの力を抜きます。
② 手で広げてキープ
指を口周りに当て、皮膚が緊張していないことを確認しながら、唇をめくるようにやや外側に広げ、5秒キープします。
③ 手を離してキープ
手を外して、さらに5秒キープします。
④ 繰り返し
①〜③を1セットとして、これを3〜5セット行います。

唇は皮膚ではなく、中にある筋肉を動かす意識が大切です。
ポイントは 「唇をめくり出すように、ふんわり外へ広げる」 こと。
そのとき、口まわりの皮膚に力を入れず、内側の表情筋が動いている感覚をイメージしてください。

唇は自分の力で育てられる

唇が薄いのは「年齢のせい」「生まれつきだから仕方ない」と思われがちですが、実はそうではありません。大きな原因は、口のまわりを囲む口輪筋の衰えや、無意識のうちに身についた口元のクセにあります。つまり、唇は何歳からでも育て直すことができるのです。

口輪筋を意識して動かすことで、唇は少しずつふっくらと厚みを取り戻し、鼻の下も短く見えるようになり、顔全体の印象も若々しく変化します。最近は唇の美容施術も注目されていますが、日常の使い方を変えなければ、また元に戻ってしまうことも少なくありません。だからこそ、自分の力で筋肉を育てることには大きな意味があります

クセを手放せば、口元は自然と変わっていきますよ

唇にボリュームが出ると血流も良くなり、乾燥や縦ジワの予防にもつながります。トレーニングで内側から唇を育てつつ、リップクリームなど外側のケアを合わせれば、より効果的です。何より、自分の努力で変化を感じられることが大きな自信となり、表情そのものがいきいきと輝き始めます。

ただし、唇や表情筋は一晩で劇的に変わるわけではありません。新しい使い方を体に覚えさせるには、焦らずに継続していくことが大切です。少しずつ積み重ねるうちに筋肉の動きが定着し、気づけば顔の印象そのものが変わっていきます。

MYメソッドアカデミー

継続を支えてくれるのが「仲間の存在」です。仲間と一緒に練習すれば、続けやすいのはもちろん、他の人の顔の動きや表情を観察することが大きな学びになります。「あ、こうやって動かすんだ」「この人もここが変わったんだ」と気づくことで、自分のモチベーションにもつながるのです。

もし「もっと詳しく学びたい」「一人ではなかなか続けられない」と感じる方は、仲間と一緒に実践できる顔の学校「MYメソッドアカデミー」で、一緒に理想の口元を育ててみませんか?

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