間々田 佳子

「姿勢が悪い」と聞くと、多くの人は背中の丸まりや猫背、反り腰といった“体”の問題を思い浮かべます。
けれど、実は姿勢の乱れは顔の印象や表情筋の使われ方にも大きく関係していることをご存じでしょうか。

私は長年、顔の筋肉=表情筋の研究を続け、「体から顔を整える」という発想で「コアフェイストレーニング®」(間々田式顔筋トレ)を考案しました。
顔だけを動かしても、根本的な変化は得られません。
なぜなら、顔と体は一枚の皮膚でつながり、姿勢の乱れがそのまま顔の筋肉の動き方や位置、血流に影響を与えてしまうからです。

「顔のたるみを改善したい」「フェイスラインを引き上げたい」
そんな願いを叶えるためには、まず自分の姿勢と向き合うこと。

今回は、表情筋研究家の視点から「姿勢が悪いとはどういう状態なのか」「なぜ姿勢が顔に影響するのか」「どう整えていけばいいのか」を、じっくり紐解いていきます。

姿勢が悪いとはどういう状態?

姿勢とは、体の重心や骨格がどのように支え合っているかを示す“全身のバランス”です。
つまり、背筋が伸びている・いないといった見た目の問題だけでなく、「体をどう使って立っているか」「筋肉をどう支えているか」が重要なポイントになります。

一般的に「姿勢が悪い」と言われる状態には、いくつかのタイプがあります。

姿勢が悪い

  • 猫背タイプ:背中が丸まり、頭が前に出ている。肩が内側に入り、胸が閉じている。
  • 反り腰タイプ:骨盤が前に傾き、腰が反ってお腹が前に出る。
  • 巻き肩タイプ:肩が前に巻き込み、首の後ろが短くなる。
  • 左右アンバランスタイプ:体の片側に体重をかけるクセがあり、左右の筋肉の使い方が違う。

これらに共通しているのは、重心がズレていること。
体のどこか一部でバランスを取ろうとして、特定の筋肉に過剰な負担がかかっている状態です。

たとえば、頭の重さはボウリングの球ほど(約5〜6kg)あります。
その重みを首の骨や筋肉が常に支えているわけですが、頭が少し前に出るだけで首の筋肉への負担は数倍にも。
その結果、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や広頚筋(こうけいきん)といった首まわりの筋肉が緊張し、顔の下半分が下に引っ張られるようになります。

つまり、「姿勢が悪い」とは単に見た目が悪いということではなく、重力とのバランスを崩し、顔の筋肉の働きにも影響を及ぼす状態なのです。

姿勢が悪くなる原因

姿勢の乱れには、生活習慣や心理状態など、さまざまな要因が関わっています。

① スマホやPCによる前傾姿勢

長時間のスマホ操作やデスクワークで、首が前に出る「スマホ首」姿勢が定着している人が増えています。
首が前に出ると、頭を支えるために首の後ろ側が常に緊張し、顎下や頬が下方向に引っ張られます。
結果として、フェイスラインのもたつきや二重あご、口角の下がりが起こりやすくなります。

② 呼吸の浅さ

姿勢が悪い人は、呼吸も浅くなりがち。胸が閉じ、横隔膜の動きが制限されると、顔への酸素供給も減少します。
表情筋が酸素不足になると、筋肉の弾力やハリが失われ、くすみ・たるみ・疲れ顔につながります。

③ 心理的な要因

人は落ち込んだり緊張したりすると、自然と体を縮こませるように丸めます。
その姿勢が続くことで、心の状態が体型に“形”として現れ、結果的に表情も暗く硬くなります。
逆に、姿勢を整えることで呼吸が深くなり、表情まで穏やかに変わるのです。

④ 筋肉バランスの崩れ

長年の生活習慣で、ある筋肉だけが過剰に働き、別の筋肉が休んでしまうアンバランスが生じます。
たとえば、腹筋よりも背筋が強い人は反り腰になりやすく、首や顎に余分な力が入りやすくなります。
それが「頬が下がる」「口角が上がらない」といった表情筋の使い方の偏りを生む原因になります。

姿勢が悪いと顔に何が起きるのか

「姿勢が悪い」ということは、つまり体の中心軸がズレている状態です。

この“軸”のブレは、背骨や骨盤の歪みだけでなく、顔の左右差やたるみ、シワ、むくみなど、表情全体の印象にまで影響します。

①  顔がたるむ

姿勢が前に傾くと、頭の重さ(約5〜6kg)を支えるために首や肩に余分な力が入り、胸鎖乳突筋や広頚筋が過剰に緊張します。
これらの筋肉は本来、顔を下から支える“土台”のような役割を持っていますが、緊張が続くとそのバランスが崩れ、顔全体を下方向に引っ張る力へと変わってしまいます。

その結果、フェイスラインがもたつき、頬の位置が下がり、顔の下半分に重心が集まるような「たるみ顔」に。
猫背や巻き肩の姿勢では、肩甲骨まわりの動きが制限されるため、首や顔への血流も滞りやすくなり、むくみ・くすみ・ハリの低下が加速します。
つまり、姿勢の崩れによって、重力の影響を受けやすい“下向きの顔”がつくられてしまうのです。

② 顔にシワができる

シワもまた、姿勢の影響を大きく受けます。
顔に刻まれるシワは、皮膚だけでなく、その下で働く筋肉の「使い方の偏り」と「位置のずれ」によって生まれます。

たとえば、ほうれい線やマリオネットラインは、首やあごまわりの筋肉が下方向に引っ張られることで、頬の皮膚が下にたわみ、折り目のようにラインができてしまうもの。
これは、頭が前に出ている姿勢(スマホ首・猫背)で顎下や首前の筋肉が硬くなり、口角や頬を支える筋肉が下へ引き込まれることが原因です。

一方、額や眉間のシワは、頭が前に出たまま目を開こうとすることで、まぶたを持ち上げる代わりに額の筋肉(前頭筋)や眉間の筋肉(皺眉筋)を過剰に使うことから生じます。
つまり、「姿勢が崩れる→頭の位置がズレる→目や口を動かす筋肉の負担が増える→表情ぐせが深まる」という連鎖によって、表情のクセがシワとして定着していくのです。

加齢や遺伝が原因だと思っていたシワが、姿勢を整えることで目立たなくなるケースも少なくありません。
姿勢を正しく保ち、頭を背骨の真上に戻すだけで、顔の筋肉が本来の位置で働くようになり、シワを作りにくい動き方へと変わっていきます。

③顔の左右差が生まれる

姿勢が傾いていると、自然に片側で咬むクセがついたり、表情を作るときに片側の筋肉ばかりを使うようになります。

結果、大頬骨筋や口角挙筋の発達に左右差が生まれ、笑ったときに片方の口角だけが上がる、顔の高さが違うなどのバランスの崩れが出てきます。

これが続くと、顔の皮膚のたるみ方にも左右差が生まれ、「写真で見ると片側だけ老けて見える」などの現象が起こります。

④呼吸と表情筋の関係

姿勢が悪いと呼吸が浅くなり、横隔膜がうまく使えません。
すると、体幹が安定せず、コア(体の中心軸)も揺らぎます。
コアが不安定なまま顔を動かすと、必要のない筋肉が余計に働き、「笑おうとしても口角が上がらない」「顔全体がこわばる」といった表情の不自然さにつながります。

良い姿勢とは? コアから整える感覚

多くの人が「良い姿勢=背筋をピンと伸ばす」と思っています。
けれど、実際には過剰に力が入っている“反り腰”の姿勢であることが多いのです。

本来の正しい姿勢とは、「力みのない、まっすぐな中心軸が通っている状態」

つまり、筋肉で固めるのではなく、体の中心に“スッと一本の線”が通っているような感覚です。

コアフェイスの作り方

① 骨盤ポジション
骨盤を立て、左右の坐骨を椅子に押し当てます。
② 背骨の意識
背骨を1つ1つ積み木のように立てながら、その上に頭蓋骨(頭)を乗せていきます。
③ 頭の位置
額とあごは床に対して90度です。首の後ろをのばし、頭を高い位置に引き上げます。
④ 呼吸
意識的に呼吸を繰り返しながら、顔、体、心のあらゆる緊張を外し、コアフェイスを細く長くしていきます。
⑤ さらにランクアップ!
余裕があれば、息を強く吐く時に腹圧をかけ、下腹部を絞り上げるようなイメージで行います。

姿勢を整える=意識を増やす

姿勢は、「形」ではなく「意識」で変わります。
背中をピンと張ることが“正しい姿勢”ではありません。
むしろ、姿勢を整えるとは体を緊張させることではなく、「意識を増やすこと」なのです。

立つ、座る、呼吸する――
そのひとつひとつの瞬間に、自分の体や周囲の空気、床との接地、重力の流れにまで意識を向ける。
「まっすぐ立とう」と力を入れるのではなく、体の内側と外側、そして空間とのつながりを“感じていく”。
足の裏、頭頂部、背面など、見えないところにまで意識を向けていくことで、自然と軸が整っていきます。

姿勢が整うというのは、力を入れることではなく、力みが抜けてゆるやかに動ける状態。
ガチガチに頑張って姿勢を保つのではなく、体の中心に軸が通ると、余分な力が自然と抜け、呼吸も動きもスムーズになります。
軸があるからこそ、リラックスして立てる。
それが本当の意味での「姿勢が整う」ということなのです。

背筋を張るより、後ろを“感じる”。 その意識が軸を育てます。

私が考案したコアフェイストレーニング®︎も、顔だけを鍛えるものではありません。
コア(中心軸)を感じることで、顔と体がひとつの流れとしてつながっていくことを目的としています。
顔〜体の軸が安定すると、顔の筋肉は自由に、のびやかに動けるようになり、表情は自然に上向きます。

ある生徒さんがこんなことを話してくれました。
「コアフェイストレーニング®︎を続けていたら、お酒の席で酔っていても姿勢が崩れなくなったんです」
まさにこれが“軸が整う”ということ。
頑張ろうとしなくても、無理をしなくても、体が自分の真ん中に戻っていく。
力で支えるのではなく、意識の深いところで整っている——そんな感覚です。

軸ができると、体は軽くなり、呼吸は深くなり、表情も柔らかくなります。
体の内側が安定すると、顔はもちろん心までもが穏やかに整っていく。
姿勢を整えるとは、ただ見た目を正すことではなく、“がんばらなくても心地よくいられる自分”に戻ることなのだと思います。

無理せず、ゆるやかに。
軸があるからこそ、しなやかに動ける。
その軽やかさが、自然とあなたの顔にもやわらかな印象をもたらしていくはずです。

MYメソッドアカデミー

「正しい姿勢の取り方がわからない」「体から顔を動かす感覚を研ぎ澄ませたい」と感じたら、ぜひ顔の学校「MYメソッドアカデミー」へ。

顔〜体の中心軸に沿って表情筋を鍛える「コアフェイストレーニング®︎」を、一緒に極めていきましょう。

軸を感じるほどに、顔も心も自然に整っていく——その感覚を、ぜひ味わってみてください。

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