
「なんだか目つきが悪いと言われたことがある」「鏡を見て、無表情だときつく見える」――。そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。実際に、目は顔の印象の中でも最も注目されるパーツのひとつであり、目つきの違いだけで「優しそう」「怖そう」「疲れている」「元気そう」といった印象が大きく左右されます。
しかし「目つきが悪い」というのは単に性格や気分の問題ではありません。表情筋の使い方や筋肉の衰え、あるいはバランスの乱れが影響していることも多いのです。本コラムでは、表情筋研究家の視点から「目つきが悪く見えてしまう原因」と「改善のために注目すべき筋肉」について解説していきます。
「目つきが悪い」とはどういうこと?
一般的に「目つきが悪い」と言われるのは、次のような特徴を指す場合が多いです。
目つきが悪い人の特徴
- 目が細く、鋭く見える
- 眉と目の距離が狭く、睨んでいるように見える
- まぶたが重く、眠そうで不機嫌に見える
- 無表情時に「怖い」と思われる
つまり「目そのものが悪い」のではなく、目の周囲の筋肉や皮膚の状態、表情のクセによってそう見えてしまうのです。
目つきが悪く見える原因
1. まぶたが緩んで目が小さく見える

加齢や眼輪筋の衰えによってまぶたが下がると、目の開きが小さくなり、目が細く見えます。すると「眠そう」「やる気がない」「不機嫌」といった印象につながります。
2. まぶたに力を入れすぎている

逆に、まぶたを強く開こうとするクセがあると、額や眉間にシワが寄り、険しい印象を与えてしまいます。これは上眼瞼挙筋が弱く、代わりに前頭筋や眉間周囲の筋肉に頼っている状態です。
3. 他のパーツが動いていない

笑顔を作るときに口元だけを動かして目元が動かないと、目だけが「無表情」のままになり、冷たい印象になります。目元と口元の動きが連動していないと、全体的なバランスが崩れて「目つきが悪い」と感じられてしまうのです。
性格と目つきは関係ない

「目つきが悪い」と聞くと「性格がキツいからでは?」と思われがちですが、これは誤解です。実際には、目つきと性格は直接的な関係がありません。
たとえば、温和な人でもまぶたが下がっていたり、眉間に力が入りやすいと「怒っているよう」に見えてしまうことがあります。逆に、気が強い人でも、目元の筋肉が柔らかく動けば「明るい」「親しみやすい」といった印象を与えることができます。
つまり、目つきは筋肉の使い方やバランスによって決まるもので、性格とは切り離して改善できるのです。だからこそ「私は性格的に怖く見えるタイプだから」と諦める必要はありません。筋肉を整えるトレーニングを通じて、誰でも印象を変えていけるのです。
「鋭い目つき」=「悪い目つき」ではない
ここで大切なのは、「鋭い目つき」=「目つきが悪い」ではない、ということです。
キリッとした眼差しやクールな目元は、意志の強さや個性の表れでもあります。人によってはその鋭さが魅力となり、自信や知性を感じさせることも少なくありません。
大切なのは、その表情が自分の意思でコントロールできるかどうか。自分の個性を否定するのではなく、「今は柔らかく見せたい」「ここぞという場面ではキリッと見せたい」と自在に目元を使い分けられることこそが、本当の意味での“目つきの改善”につながります。
つまり、目元の筋肉を整えるトレーニングは、「悪い印象を消すため」だけではなく、自分の個性を活かしながら、自由にコントロールできるという自信を手に入れるためのものでもあるのです。
目つきと関わる重要な筋肉たち
目つきの印象に大きく関わるのは、主に 外眼筋・上眼瞼挙筋・眼輪筋 の3つです。これらの筋肉は、それぞれが独立して働くのではなく、連携しながら「目を動かす・開く・閉じる」といった基本的な動作をつくっています。そのバランスが崩れると、目元に不自然さや緊張感が生まれ、「目つきが悪い」という印象につながるのです。
1. 外眼筋(がいがんきん)

外眼筋は、眼球を上下左右、斜めにまで動かす6本の筋肉の総称です。視線をコントロールする役割を担っており、読み書きや会話のときなど、私たちは無意識のうちにこの筋肉を使っています。
外眼筋の働きが硬直すると、視線がぎこちなくなり、相手から見ると「睨んでいる」「落ち着かない」印象を与えます。逆に外眼筋が柔軟に働いていると、視線がスムーズに移動し、相手に安心感や親しみやすさを伝えることができます。視線の滑らかさそのものが、人間関係の印象を左右すると言えるのです。
2. 上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)

上眼瞼挙筋は、上まぶたを持ち上げる唯一の筋肉です。この筋肉が衰えると、上まぶたが下がって目が細く見え、「眠そう」「不機嫌そう」と誤解されやすくなります。
一方で、上眼瞼挙筋がうまく働かず、代わりに額の前頭筋や眉間の筋肉に頼って目を開けるクセがつくと、額のシワや眉間のシワが強調され、険しい印象を与えてしまいます。まぶたの開閉の主役である上眼瞼挙筋を正しく使えるかどうかが、目つき改善の最大のポイントになります。
3. 眼輪筋(がんりんきん)

眼輪筋は、目の周りをぐるりと取り囲むドーナツ状の筋肉です。まばたきや瞬き、目をギュッと閉じる動作などを担い、涙の分泌や循環とも深く関わっています。
眼輪筋が衰えると、目の下の皮膚がたるんでクマやシワが目立ち、疲れた印象を与えます。さらに、笑顔を作るときに眼輪筋が十分に働かないと「目が笑っていない」状態になり、冷たく感じられてしまうのです。逆に眼輪筋が柔らかく動くと、目尻に自然なシワが寄り、「優しさ」や「親しみやすさ」を表現できます。
目つき改善のためにできること
1. 上眼瞼挙筋を意識してまぶたを開く
眉間や額にシワを寄せず、目そのものを自然に開ける感覚を身につけましょう。トレーニングとしては「眉や額に手を当ててシワを押さえながら目を開ける」練習が有効です。
2. 外眼筋をバランスよく使う
視線を上下左右に動かすエクササイズで、外眼筋を柔軟に保ちましょう。これにより視線が安定し、落ち着いた印象を与えることができます。
3. 眼輪筋を柔らかく動かす
目を優しく閉じたり、笑ったときに頬と連動させて眼輪筋を使う練習を取り入れると、自然な「目の笑い」が生まれます。
4. 表情全体のバランスを整える
目だけでなく、口角や頬の動きと連動させることが大切です。「目元と口元が同時に動く笑顔」を意識すると、柔らかい印象になります。
「眉ロックアイトレスイング」で目の動きをスムーズに
目つきを改善するトレーニングにはさまざまな方法がありますが、ここではビギナーにも分かりやすい「眉ロックアイトレスイング」をご紹介します。
額や眉間にシワが入らないように指で押さえ(ロック)、前頭筋や眉間の筋肉を使わない状態を作ります。そのうえで、上眼瞼挙筋を意識してまぶたを開き、さらに外眼筋を使って眼球を動かしていきましょう。
ポイントは次のとおりです。
眉ロックアイトレスイングのポイント
- 目を動かすときは、できるだけ遠くを見る意識を持つ
- 顔や首が一緒に動かないように、体の中心軸を安定させる
こうすることで、まぶたや額に余計な力を入れずに、スムーズでクリアな目の動きを育てることができます。
眉ロックアイトレスイング
- ① 額と眉を固定
- 眉の上に人差し指を当て、額と眉が動かないようにロックします。

- ② 目を開く
- 鼻から息を吸い、口から吐きながら、目を開きます。

- ③ 視線をうごかす
- 目を閉じながらふたたび息を吸い、吐くタイミングに合わせて目を開き、目線を、右斜め上→天井→左斜め上へ、ゆっくり動かします。眉間にシワが入らないように、目をキュッと閉じます。

- ④ 反対も
- 反対も同様に行います。

- ⑤ 繰り返し
- ①〜④を1セットとして、これを2〜4セット行います。

気づきとケアで、自分らしい目元へ
「目つきが悪い」と感じたとき、多くの人は「自分の性格のせい」「今日は気分が沈んでいるから」と思いがちです。けれど、実際にはそうではありません。原因の多くは、目の周囲の筋肉の衰えや、無意識のうちに身についてしまった筋肉の使い方のクセにあるのです。
外眼筋・上眼瞼挙筋・眼輪筋といった筋肉を正しく働かせることで、目の動きはスムーズになり、まぶたは自然に開き、笑顔も目元まで届くようになります。その結果、相手に与える印象は柔らかさや温かさが増し、より心を開いてもらいやすくなるのです。
ただし、目元の魅力は「優しさ」だけではありません。キリッとした鋭さやクールなまなざしも、個性や意志の強さを感じさせる大切な要素です。重要なのは、自分の目元を否定するのではなく、「柔らかさ」や「鋭さ」を自在にコントロールできること。場面に合わせて目元を表現できることが、自信にもつながります。

『自分はこういう目つきだから…』と諦めるのはもったいない!筋肉の動き次第で、表情はいくらでも変わります
さらに大切なのは、自分では気づきにくい「表情のクセ」を知ることです。普段、鏡を見るときはメイクや髪型に意識が向きがちですが、ふとした無表情や笑顔のときの目元をチェックしてみてください。「まぶたに力が入りすぎていないか」「笑っているのに目が動いていないのではないか」といった気づきが、改善の第一歩になります。
目元は「心の窓」と呼ばれるほど、人の印象を左右する重要なパーツです。筋肉の構造を理解し、日々の生活にちょっとしたケアを取り入れるだけで、見た目年齢も、人からの印象も大きく変わっていきます。
MYメソッドアカデミー

セルフケアや表情筋の正しい使い方を、専門的に・体系的に学べるのが 顔の学校「MYメソッドアカデミー」 です。自分ひとりでは気づけないクセも、プロの目線で丁寧にフィードバックを受けながら改善できます。目つきだけでなく、顔全体の印象をより明るく、若々しく、そして“自分らしく”変えていきたい方におすすめの学びの場です。
「私は性格的にキツく見えるから仕方ない」と諦めていた方も、正しいトレーニングを通じて、“本来の優しさ”も、“意志の強さ”も、どちらも自在に表現できる目元を手に入れることができます。あなたの目元は、まだまだ変わります。