
「人前で話すと途端に体が固まる」
「緊張しやすい性格だと思っている」
「頭では落ち着こうとするのに、心がついていかない」
こうした悩みは珍しいものではなく、年代を問わず多くの方が抱えています。
しかし、表情筋研究家としてお伝えしたいのは、緊張しやすいのは“性格ではなく、身体の状態のクセ”である、ということです。
特に、顔の筋肉(表情筋)のこわばりは、脳に「今は緊張すべきだ」という信号を送り続け、心の緊張を慢性化させてしまいます。
本コラムでは、緊張しやすさの構造と、表情筋からアプローチして根本的に状態を整えていく方法について解説します。
緊張しやすいとはどういう状態なのか

「緊張しやすい」という言葉には、以下のような複数の状態が含まれています。
- 呼吸が浅くなる
- 肩や首がこわばる
- 顔の筋肉が硬く、表情が作りにくい
- 舌が奥に引き込まれ、喉に力が入る
- 眉間に力が入りやすい
- 胸が広がらず、身体が縮こまる
これらはいずれも、身体と脳が“警戒モード”に入っているサインです。そして注目すべきは、緊張のスイッチは顔の筋肉でも入るという点です。
表情筋は脳に近く、神経のネットワークが密集しています。眉間が寄る、舌が下がる、頬が固まる。
こうした微細な変化が脳に影響し、心の状態まで緊張方向へ引っ張ってしまいます。
つまり、
心が緊張する → 顔が固まる
だけではなく、
顔が固まる → 心が緊張する
という“逆方向のルート”も常に働いているのです。
緊張しやすさを改善するためには、この顔と心のループを理解する必要があります。
無駄な緊張が標準設定に

緊張しやすい人に多い共通点は、「緊張している状態そのものがクセになっている」という点です。
本番の場面だけで急に緊張しているのではなく、日常生活の中でも、うっすらと力んだ状態が続いています。
- いつの間にか眉間に力が入っている
- 口元がきゅっと結ばれている
- 頬がこわばっていて、表情が動きにくい
こうした状態が積み重なることで、顔全体が凝り固まり、無駄な力みが“標準設定”のようになってしまうのです。その背景にあるのが、顔の「運動不足」です。
顔の運動不足と緊張の関係

私たちは体の運動不足には敏感でも、「顔の運動不足」には驚くほど無自覚です。ランニングやストレッチで体を動かす習慣があっても、顔の筋肉は意識的に動かさなければほとんど使われません。
むしろ日常生活では、スマホを見る姿勢や表情を抑えたコミュニケーションによって、顔を動かす機会は年々少なくなっています。
そのため、
顔の筋肉が十分に伸び縮みしていない
↓
血流が滞り、筋肉が硬くなる
↓
固い状態が“通常モード”になってしまう
という流れが生まれ、結果として「顔がこわばりやすい人」=「緊張しやすい人」という状態に近づいていきます。
さらに、顔にはそれぞれ“使い方の癖”があります。
- 眉間を寄せる
- 無意識に眉を上げる
- 口周りに力が入りやすい
- 頬がほとんど動かない
- 舌が常に奥に落ちている
こうした癖が積み重なると、本来必要のない部分に力が入り続け、顔が休まらない状態になってしまいます。顔が固まっていると、脳は「緊張している」と判断しやすくなり、心のほうも落ち着きにくくなります。
つまり、
顔を動かさない→ 筋肉が固まる→ 力みが当たり前になる→ 心も緊張しやすくなる
というサイクルが、日常の中で知らず知らずのうちに強化されていくのです。
顔のこわばりが心の緊張を強める理由
顔の筋肉が固まった状態が続くと、脳は常に「力を入れるべき状況だ」と解釈します。これは、表情筋が自律神経と密接に関わっているためです。
- 眉間に力が入る → 警戒モード
- 口元が固い → 呼吸が浅くなる
- 舌が奥に下がる → 緊張方向へ傾く
このように、顔の状態はそのまま心の状態に反映されます。
そのため、顔がこわばったままの時間が長いほど、心も緊張がほどけにくい構造になります。
逆にいえば、顔がゆるむと心もゆるむ。
表情筋は、そのくらい心の反応に影響を与えるパーツなのです。
ここまでまとめると、
- 顔の運動不足
- 表情の癖
- 無意識の力み
これらが積み重なることで、「緊張しやすい状態」そのものが定着してしまうということが分かります。
とりあえず顔を動かしてみることの効果

緊張しやすい人の多くは、「どうにか心を落ち着かせよう」と、呼吸法やメンタル面のコントロールに意識を向けがちです。もちろんそれらも大切ですが、心だけを直接変えようとする方法にはどうしても限界があります。心は感情や環境に左右されやすく、「落ち着こう」と思って落ち着けるほど単純ではありません。
一方で、顔は意識さえ向ければ“すぐに動かすことができる”部位です。ここが大きなポイントです。
表情筋は、動かせばその瞬間に血流が変わり、筋肉のこわばりが緩んでいきます。
つまり、身体の側から受け取る“安心のサイン”を、脳に直接送りやすいのです。心を変えるより、顔を動かすほうがずっと簡単で、再現性が高く、実際に緊張の改善にも直結します。
なぜなら、顔を動かすと
- 呼吸が深くなる
- 無駄な力みが取れる
- 「こわばり=警戒モード」が解除される
こうした変化が積み重なることで、脳は「安心してよい状態」だと判断するようになり、心もそれに合わせて落ち着いていくからです。
心 → 顔 を自分で変えようとするのは難しい
顔 → 心 は自分で整えやすい
という違いがあります。表情筋を整えると、
- 呼吸が深まり
- 姿勢が自然に安定し
- 目元・口元に入っていた無駄な力が抜け
- 脳が“安心状態”に切り替わる
こうした変化が生まれます。
そしてこの「安心状態」が積み重なることで、徐々に“緊張しにくい身体”が育っていくのです。
緊張を解くのにおすすめの表情筋トレーニング
ここからは、緊張しやすさを改善するために特に有効なトレーニングをご紹介します。緊張を和らげるには、とにかく顔を動かし、運動不足を解消することが最優先です。
どのトレーニングも効果的ですが、今回取り上げるのは、初めての方でも取り組みやすく、即効性を実感しやすい2つです。
「ストレスリセット」でリフレッシュ
- ① 目を開く
- 目を大きく見開きます。鼻から息を吸い、吐きながら、思い切り舌を出します。息を吐ききったら、鼻から息を吸いながら、舌を戻します。これを3回繰り返します。

- ② 深呼吸
- 目を閉じて深呼吸。顔全体の緊張が緩み、血行が良くなっていることを確認します。

- ③ 繰り返し
- ①〜②を1セットとして、これを3〜5セット行います。

舌は、顔と喉の境目にある“深層の筋肉”とつながっています。
この部分は、自律神経の働きに大きく影響するため、舌が奥に沈むと呼吸が浅くなり、身体が緊張方向へ傾きやすくなります。
反対に、舌をしっかり動かすと、
- 喉周りのこわばりがほぐれる
- 呼吸が深くなる
- 首から胸にかけての緊張が抜ける
- 気道が開き、身体全体が“落ち着く状態”に戻る
という変化が起こります。
さらにこのトレーニングでは、舌・目・呼吸が同時に動くため、脳の血流が一気に高まり、
短時間でも“頭がスッと軽くなるようなリフレッシュ効果”を得られます。
舌筋は日常生活でほとんど使われていない部位だからこそ、少し動かすだけで変化が分かりやすく、「気持ちが切り替わる」「緊張がほどけやすくなる」と感じる方が多いのも特徴です。
「フェイスウォーミングアップ」で表情筋のこわばり解消
- ① 口をすぼめる
- 鼻から息を吸い、吐きながら口を「しゅ」の形にすぼめて前に突き出します。

- ② 鼻の下を伸ばす
- 鼻の下をのばして、口を「お」の形にします。

- ③ 顔を開く
- 目をぱっちりと開きながら、口を「うぁ」の形で顔全体を外に開きます。

- ④ 緩める
- 鼻から息を吸い、吐きながら顔全体を緩めます。

- ⑤ 繰り返し
- ①〜④を1セットとして、これを3〜5セット行います。

フェイスウォーミングアップは、顔全体を大きく動かし、表情筋のこわばりを一度にほぐすトレーニングです。顔全体の伸縮によって血行とリンパの流れが一気に促進されます。
顔全体を動かすと
- 表情筋の運動不足が解消される
- 固まっていた筋肉に血液が巡る
- むくみや滞りが取れ、顔が軽くなる
- 無駄な力みが抜け、自然な表情が戻る
- 表情筋の動きが整い、脳が“安心状態”を受け取りやすくなる
といった影響があります。
つまり、顔全体を動かすことは、緊張状態をリセットし、心を落ち着かせるための基本的なアプローチです。
特に、緊張しやすい人は表情筋の動きが小さくなっていることが多いため、フェイスウォーミングアップのような全体運動がとても有効です。
ふだん使っていない部分も目覚めさせるようなイメージで、顔を大げさなくらい思い切り動かしてみましょう。
顔の緊張をほぐせば心も落ち着く

緊張しやすい人は、「これは性格だから仕方ない」と思い込んでしまいがちです。また、緊張は“メンタルの問題”と捉えられることも多く、無理に心だけを落ち着かせようとして、かえって苦しくなることもあります。
しかし、緊張は心だけで生まれているわけではありません。顔の筋肉の使い方やこわばり、呼吸の浅さ、こうした身体の状態から生じている緊張も少なくありません。
だからこそ、顔を動かすことによって緊張を和らげるという視点が、とても大切になります。
実は私自身、もともと緊張しやすいタイプで、人前で話すことが大の苦手でした。大勢の前に立つと頭が真っ白になり、何を話せばいいのかわからなくなってしまう。
そんな経験を何度もしてきました。
もちろん今でも、緊張が全くなくなったわけではありません。
ただ、表情筋を日々動かし、顔のこわばりを取り除く習慣が身についたことで、緊張の波に飲まれそうになっても「戻ってこられる」感覚が育ってきました。
顔を動かして表情をコントロールできるようになったことで、心の緊張にも自然と手が届くようになってきたのです。
その積み重ねの結果として、今では何百人という方の前でも講演ができるようになりました。実際、講演前には控え室やトイレの中で「ストレスリセット」や「フェイスウォーミングアップ」を行い、顔のこわばりを取ってからステージに向かっています。これは特別な儀式でもなく、私自身の緊張を整えるための“日常のケア”です。
もしあなたが、
「緊張しやすい自分を変えたい」
「本番の場面で落ち着けるようになりたい」
そう感じているなら、まずは心ではなく顔からアプローチしてみてください。頑張って心を落ち着けようとしなくても、顔の緊張がゆるめば、心も自然に落ち着いていきます。これは、多くの生徒さんと向き合ってきた中で確信していることです。

深く考えすぎず、まずは顔を動かしてみることから始めてみてくださいね。
緊張しやすさは“変えられる状態”です。その第一歩として、今日からほんの数十秒でも構いません。舌を動かし、表情筋を動かし、顔をほぐすことを始めてみてください。
その積み重ねが、「緊張しやすい自分」から「緊張とうまく付き合える自分」へと導いてくれます。
MYメソッドアカデミー

もし本格的に顔の使い方を学びたい方は、表情筋を体系的に学べる顔の学校「MYメソッドアカデミー」をご活用ください。
緊張や力みのクセに気づき、表情と心を整える習慣づくりをサポートしています。あなたの“緊張しやすさ”が、今日ここから、少しずつ変わり始めますように。